価格転嫁・値決め
値上げを、言い出せない
関係を壊さず「価格を直す」実務
公開日 2026年8月1日 / 株式会社Lea Schritt

材料も電気も人件費も上がった。それでも見積書の単価だけが3年前のまま——上がったコストは、全部その利益から静かに引かれています。 国の調査では、コスト上昇分のうち転嫁できたのは平均53.5%。半分は言えていて、残り半分は多くの会社が飲み込んでいます。 本記事の立場を先に言うと、値上げの成否は話術ではなく「準備」が9割。感情の問題を、数字の問題に変えていきます。
数字で見る「価格転嫁の現在地」
転嫁率53.5%は「言えば半分は通る」の裏返しでもあります。切り出した会社の多くは、ゼロ回答ではなく一定割合を通してもらっています。 一方、言わなければ転嫁率は確実に0%。言うリスクは不確実ですが、言わない損失は確実です。
値上げ3%の破壊力 ― 価格は利益に直結する唯一のレバー
売上5億円・営業利益率3%(利益1,500万円)の会社が、数量を落とさず3%値上げできると、増えた分はほぼ全額利益に落ち、利益は約2倍になります(数量・原価が不変の場合の試算)。同じ効果をコスト削減で出すには、はるかに大きな削減が必要です。
「言い出せない」の4つの正体
言い出せない理由は、突き詰めると4つ。どれも「準備がないまま、交渉の場面だけを想像する」から生まれる不安で、すべて準備で消せます。
① 関係が壊れる気がする
実際は取引先も自社の仕入先から値上げを受けており、思うほど非常識な話ではありません。関係を壊すのはむしろ「無理を重ねた末の品質低下や突然の撤退」=沈黙のほうです。
② 根拠を示せない
原価がどれだけ上がったかを自分の数字で言えない——これが最大の原因。逆に原価票1枚あれば、値上げは「お願い」から「説明」に変わります。
③ タイミングが分からない
相手の期初・自社の価格改定月・国の「価格交渉促進月間」(毎年3月・9月)など、口実になる節目は年に何度もあります。待たずに次の節目から。
④ 断られたら終わりに見える
一発勝負だと思うから言えない。松・竹・梅の3案と条件調整の引き出しを持てば、「断られたら次の案」に進むだけになります。
大事な前提として、全取引先に一斉に言う必要はありません。まず1社——言いやすく、金額インパクトのある相手から。最初の1社で「型」ができます。
準備が9割 ― 3点セットの全体像
原価の見える化(原価票1枚)
主要製品を1つ選び、3年前と今の原価の「差」を出す。これが、値上げを「お願い」から「説明」へ変える根拠になります。(記入式の原価票シートは実務ガイドに収録)
値上げ幅は1つでなく「3案」
松・竹・梅の3案を用意し、一発勝負にしない設計にします。(率の決め方と、価格以外の条件の引き出し方は実務ガイドで)
交渉の型
当日やることを「読み上げて、反応を聞く」だけにする段取りを組みます。(そのまま送れる交渉メール・切り出しの文例と、交渉前チェック7問は実務ガイドで)
「値上げしない」にも、値札がついています
原価が1個あたり数十円上がったまま放置すれば、出荷数の多い会社ほど、失う利益は月数十万〜数百万円規模で静かに積み上がります。 「自社の主力製品なら、いくら消えているのか」は、原価票に数字を入れれば1時間で出せます。
実務ガイドには、製造業を例にした原価票の記入例と、そこから松竹梅3案(新単価・年間回収額)を設計する手順まで収録しています。自社の数字に置き換えて、そのまま使えます。
続きは「明日から動ける道具」で
ここまでが考え方の全体像です。実際に動くには、記入式の原価票・自社の数字での3案・そのまま送れる交渉文例・交渉前チェック7問—— この「道具」が要ります。全12ページの実務ガイドに、すべて揃えました。
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出典:価格転嫁率53.5%・労務費50.0%は中小企業庁「価格交渉促進月間フォローアップ調査」(2025年)/最低賃金+6.3%(全国加重平均1,121円)は厚生労働省(2025年度)。 本記事はお役立ち資料 vol.11「値上げを、言い出せない」の要点を再構成したものです。